2022年度 体験談02
参加年度 | 2022年度 |
所属 | 早稲田大学 大学院政治学研究科 |
課程 | 修士課程 |
参加形式 | 現地参加 |
Summer programに参加されたきっかけを教えてください。
私は、修士課程に入学して以来、将来のアメリカの大学院博士課程進学を目標に、計量分析の手法の理解に努めてきましたが、私は学部で統計学に触れてこなかったので、大学院の先輩方が研究を進めているレベルで計量分析の手法を体得するまでの道のりが非常に長く感じられていました。その中で、早稲田大学のスーパーグローバル大学創成支援プログラムを通してICPSRの存在を知り、アメリカの大学院教育を肌身を通して感じ、短期集中で計量分析の手法を身に着けるまたとない機会だと考えたため、ICPSRサマープログラムに参加しました。
受講したセッション、コース名を教えてください。
セッション2に参加しました。レクチャーからは、"Introductory/Review Lectures on Matrix Algebra"(行列入門)、"Introduction to the R Statistical Computing Environment"(R 入門)を受講しました。ワークショップからは、"Panel Data and Longitudinal Analysis"(パネルデータ・時系列分析)、"Regression Analysis II: Linear Models"(回帰分析II: 線形回帰モデル)を受講しました。
受講前の準備について、受講までの間にどのような準備を行ったか教えてください。
私は、受講前の準備としては特段のことをしませんでした(できませんでした)。これは、そもそも私のICPSRサマープログラム参加が、修士課程入学わずか半年後であったこと、計量分析という方法論を知ること自体が修士課程に入学してからであったことに起因します。そのため、統計手法に関しては、私にとっては大学院の春学期の授業をこなす以外に受講前の準備のしようがなかったように思います。しかし、サマープログラム開始前のオリエンテーションでは、各自の関心のある統計手法や受講予定の授業について、講師の先生と1対1で面談をする機会があるので、統計手法についての広い理解をしておいた方が、セッション開始当初から自分の目標にあった授業を選択できたように思います。他方、英語でのコミュニケーションについては、意識的に英語で開講される授業を履修し、会話のトレーニングを積むことを心掛けていました。
講義内容について、授業の進め方やクラスの規模、授業の難易度について教えてください。
私は4週間のセッション2に参加し、レクチャーとワークショップの両方を受講しました。
レクチャーは、主に最初の2週間で開講される、短時間の入門授業です。「行列入門」はワークショップ間の昼休みの1時間で開講され、先生が線形代数の基礎的な事項を講義しました。参加人数は20人程度でした。「R入門」はワークショップ終了後の夕方に開かれ、Rの使い方について、先生の実演と学生の実行を交互に繰り返して、理解に努めました。参加人数は10人程度でした。
ワークショップは、セッションの期間中を通して行われる、長時間の授業です。「パネルデータ・時系列分析」は13時から15時まで開かれ、前半1時間で先生がメソッドの理論を説明し、後半1時間でラボセッションとして学生がコードを実行しました。この授業は履修者が多く、オンラインでの参加者も含めると、参加人数は40人程度でした。また、この授業はセッションの中でも発展的な内容のものでした。「回帰分析II: 線形回帰モデル」では、2時間を通して、先生とTAが理論的基礎の解説をしました。この授業は、基礎的な授業ということもあり、参加者は少なく、参加人数は5人でした。
プログラム期間中の学習について、予習や復習、課題の取り組み方について教えてください。
プログラム期間中は、毎日リーディングの予習があるほか、毎週末には課題が課されるため、特に平日は毎日忙しく取り組みました。予習、復習や課題については、授業の隙間時間にICPSRの本部に学生たちが自発的に集まっていたので、そこに行くことで、お互い自然と助け合いをしていました。
プログラム期間中の授業以外の活動について、他の参加者との交流やイベントについて教えてください。
授業以外の活動では、まず、ICPSRによる、公式な交流イベントが挙げられます。初日にはオリエンテーションを兼ねたワーキングランチがあり、最初と3回目の土曜日には、近くの公園でケータリングつきのレクリエーション会が開かれました。また、不定期に、講師として授業を持つ際の心構えについて話し合う、ワーキングランチが開かれました。他方、非公式イベントとしては、受講生同士で、自然発生的にご飯やバーに出かけていました。
現地での生活について、宿泊場所の確保、食事の調達、身の回りの生活品の買い物などについて、困ったことやおすすめの情報があれば、教えてください。
私は、宿泊場所の確保が遅れ、手続きが少々あわただしくなりました。ですので、今後参加される方は、前もって、宿泊場所を探すことを強くお勧めします。私は、Inter-Cooperative Council (ICC)のOsterweilという家に滞在しましたが、早めに動けば、subletと一般に呼ばれる、夏休みの間ミシガンを離れる学生から、部屋を借りることも可能です。この場合、滞在費を安く抑えることができます。
食事の調達については、外食することが多かったこともありますが、私は近所のTargetという小さめのスーパーで、ホットドッグ用の1ドル未満のパンとフィラデルフィアのクリームチーズを買って済ませていました。円安の影響か、私が行ったときはほとんどのものが日本より高く感じられましたが、ホットドッグ用のパンやフィラデルフィアのクリームチーズ、バナナなどは日本よりも安かったので、そういう食品を探すのが、個人的にはおすすめです。外食の中では、セントラルキャンパス南東にあるOasis Grillというレバノン人が切り盛りする中東料理屋が味がよく、価格も安く、量も豊富おすすめです。
Summer program参加の感想について、印象に残ったこと、プログラムを通じて得られたこと、あなたの研究やキャリアに活かされたことがあれば、教えてください。
私はこのプログラムを通して、言葉で語りつくせないほど有益ですばらしい体験をすることができました。最大の課題であった統計手法への理解が、「回帰分析II: 線形回帰モデル」の授業を通して深まったほか、多くの参加者と交流することを通して、アメリカの大学院教育を五感を通じて経験することができました。とりわけ、受講生のほとんどは博士課程に在籍しているかすでに博士号を持っていたため、修士課程にいながら先のレベルを肌で感じられました。残念ながら、「パネルデータ・時系列分析」は当時の私にとって非常に難しく、消化不良に終わってしまいましたが、逆に言えば、近い将来に私が目指すべき目標が具体的な形で見えたことになります。これらを通して、おぼろげながら、アカデミズムの中でのキャリアパスの描き方が見えてきたように思います。今後は、この経験を原動力にして、私自身のキャリアパスを切り開いていきたいと思います。
参加を検討されている方、参加を迷われている方にアドバイスやメッセージをお願い致します。
上述したように、ICPSRに参加することは、単に統計手法の習得に役に立つだけでなく、アメリカの大学院教育に触れ、そこで学ぶ学生と交流する機会が持てる点で、素晴らしい経験になるはずだと思います。私は、ICPSRで多くのことを学び、そのすべてが今の研究生活のベースになっています。もし、参加を迷われているなら、思い切って参加することを強くお勧めします。